【本】「彼女は一人で歩くのか?Dose She Walk Alone?」(講談社タイガ)は良質なSFファンタジーだ。
恥ずかしながら、森博嗣作品を本著ではじめて手に取った。よくよく調べてみると、この作品に出てくる「ウォーカロン」などは、前作でも登場しているようで、そういった意味ではファンにとって入り込みやすい作品なのかもしれない。しかし、はじめての私でも楽しく読むことができた。好きな作品だ。
彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)
- 作者: 森博嗣,引地渉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/10/20
- メディア: 文庫
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どんな小説か?
本著は、「Wシリーズ」としてシリーズ化が決まったおり、既に何本かは完成している。その最初の作品となる。
舞台は、人間とアンドロイド(ウォーカロン)が併存する近未来。人工細胞の発達から、人間はウォーカロンに、ウォーカロンは人間に近づき、区別が至極曖昧な世界ができる。その世界で、ある研究者をめぐって起こる事件の物語だ。
「人間性とはなにか」を考える。
このような世界観なだけに、「登場人物が人間なのか、ウォーカロンなのか」が、常に頭の中で疑問として起こり続ける。これは主題として常に根底にあるため、「人間性とはなにか」を考え続けることになる。ウォーカロンに近い人間と、人間に近いウォーカロンを区別する術はなにか。行動原理やそれぞれの動機に違いを見出だすことはできるのか。物語の上で想像をめぐらせ、思考実験に近いイメージを抱く作品だ。
しかしながら、その区別への疑問がそもそも意味を為さない可能性とも常に隣り合わせだ。区別することは本当に必要なのか。主人公である研究者の主観を通じて、マクロ的・ミクロ的に考えることになる。
まとめ
一定のミステリィ要素はありながらも、全体として近未来の工学を中心としたSFファンタジーのような作品だ。その世界観に触れるだけでも楽しい。次作も近々にリリースされるとあり、自分にとって楽しみなシリーズになった。